"X線回折"

X線自由電子レーザーによる分子の電子密度推定

米国,欧州,日本及び韓国ではX線自由電子レーザーと呼ばれる装置が開発され,米国,日本では運用段階にある.現在,この装置によって初めて可能となったX線領域の波長を持つ高強度レーザー光を用いた,様々な実験が計画および実施されている.本稿では,そうした実験のひとつ,X線回折を用いた生体単粒子の電子密度推定について説明し,2次元回折画像から2次元電子密度を推定する位相回復問題に対する我々の研究成果について解説する.

弱い回析パターンからの位相回復 単粒子構造解析に向けて

SPring8に建設された短パルスかつ大強度のコヒーレントX線源は、生体高分子など単粒子での構造解析が期待されている。しかし、この従来の10億倍の輝度を持つ光を照射すると粒子は破壊されてしまうため、そうなる前の短時間(数fs以内)に回折パターンを観測しなくてはならない。そのため、測定される回折強度は弱いものになってしまう。われわれは、従来の方法よりも粗い回折パターンから位相回復できるベイズ統計にもとづいたアルゴリズムを開発したので、本稿で紹介する。