独立成分解析の信号処理への応用

概要

独立成分解析 (ICA, Independent Component Analysis) は主成分分析 (PCA, Principal Compoenent Analysis) と同様,多次元信号の解析手法である.PCA では 信号の 2 次の相関のみに注目し,それらを無相関にする 変換を求める.これに対し ICA は高次の統計量,あるいは時間的な相関に基づく独立性により信号を分離する変換を求める.正規分布以外の確率分布に対しては一般に無相関と独立性とは一致しない.したがって PCA と ICA は異なる結果を与える.この ICA が近年注目されるようになったのは,問題の単純さとその応用の可能性からである.ICA では信号源が独立であるという仮定のみを置く.このことから Blind Source Separation とも呼ばれ,この仮定に基づいて信号を分離する.例えば脳計測によって得られたデータを考える.脳内では様々な部位が活動しており,それらが混合されて観これらが独立だと考えられれば ICA の仮定があてはまる.この他にも雑音の加わった画像,また複数の話者が同時に発声している信号を分離する問題などが挙げられる.ICA の手法を用いれば,これらが自動的に独立な成分として分離できるのである.本稿では近年盛んに研究されている ICA について問題の定式化,代表的な解法,応用の現状について述べる.

タイプ
収録
計測自動制御学会「計測と制御」

関連項目