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X線自由電子レーザーによる分子の電子密度推定

米国,欧州,日本及び韓国ではX線自由電子レーザーと呼ばれる装置が開発され,米国,日本では運用段階にある.現在,この装置によって初めて可能となったX線領域の波長を持つ高強度レーザー光を用いた,様々な実験が計画および実施されている.本稿では,そうした実験のひとつ,X線回折を用いた生体単粒子の電子密度推定について説明し,2次元回折画像から2次元電子密度を推定する位相回復問題に対する我々の研究成果について解説する.

2クラス判別器の組み合せによる多クラス判別 統計モデル とパラメータ推定

機械学習の分野では,2クラス判別器を組み合わせて多クラスの判別器を作る様々な試みがなされている.Error Correcting Output Codes (ECOC)と呼ばれる方法が頻繁に用いれているが,それぞれの2クラス判別器が軟判定を返す場合にはECOCの他にもBradley-Terry (BT)モデルを用いる方法が提案されている.本稿ではこのBTモデルを用いる組み合わせ法を統計モデルとして考え,既存の方法の改善法のひとつを示す.

通信路推定と誤り訂正による衛星デジタル放送移動受信の改善

本論文では,衛星デジタル放送の移動体における受信の問題を扱う.現在,衛星デジタル放送では移動体においては固定局と同様なシステムでは満足な受信はできない.この問題に対して,通信路の確率モデルを考え,その推定を行ない,確率モデルに基づく推論を行なうことで受信品質の改善を目指す.本稿で提案する通信路モデルは重回帰モデルである.パラメータ推定に対しては,二つの方法を提案する.放送受信では実時間処理が重要であることから,本提案手法は実時間で処理できる簡便なものである.提案する手法は実際に自動車を走行させて …

情報幾何学に基づく確率伝搬法の解析

1980年代後半Pearlが提案した確率伝搬法は,大規模なグラフィカルモデルに対する確率推論のための計算手法である.同等の手法は統計物理学,統計学,誤り訂正符号の復号法などにも存在し,広く用いられている.確率伝搬法は木の構造のグラフに対してはグラフの大きさに比例した計算量で厳密解が得られる.しかしループを持つグラフに対しては繰り返し計算の収束性,および得られた結果の近似精度ともに理論的には十分理解されていなかった.一方で確率伝搬法は実用上有効な手法であり,その性質を理論的に明らかにすることは重要 …

ターボ復号の情報幾何

ターボ符号は高い誤り訂正能力をもち,かつ効率の良い復号法をもつ誤り訂正符号として知られている.繰返しアルゴリズムを用いる復号法の特性については,様々な数値実験を通じて細かく調べられ,有効性が示されているが,理論的な結果は十分には得られていない.本論文では情報幾何学的観点からこの問題を扱う.その結果,ターボ符号を解析するための数学的枠組みを与え,その枠組みのもとでターボ復号解のもついくつかの基本的性質を明らかにする.本論文ではターボ符号に対する情報幾何を特に扱うが,近年,ターボ復号アルゴリズムが低 …

再帰的学習によるEMアルゴリズムの加速

EM アルゴリズムはボルツマンマシンや確率的パーセプトロンなどの学習を始め,HMM やその他隠れた確率変数を持つ確率分布の学習に対して広く持ちいられている.このアルゴリズムは繰り返し演算により最尤推定を求めるものであり,計算量が少なく実現が容易だが,一般に収束が遅い.一方,統計学の分野で Fisher のスコアリング法と呼ばれる手法があり,これも同様のモデルに対して適用できる繰り返し演算である.スコアリング法は収束は速いが計算量が多 く実現が難しい.本論文では EM アルゴリズムを再帰的に用いて …

HMMの構造探索による音素モデルの生成

本論文では,HMM の構造決定のためのアルゴリズムを提案する.音声認識で用いられる HMM の構造は,多くの場合知識や経験に基づき決定されている.しかしながら,この問題は確率モデルの構造決定問題として扱うことができる.すなわち,赤池情報量規準 (AIC) などの尺度でモデルを評価し,最も良いモデルを選択するという方法で定式化できる.簡単な確率モデルにおいては,あらかじめ複数のモデルを用意し,最ゆう法でパラメタを推定した後に AIC 等で最適なモデルを選択すれば良い.一方,HMM のようにパラメタ …